「本当ですか!? やっぱりやめた、なんてなしですよ!」


望美は、まるで陽の光を浴びた花のようにぱあっと明るい笑顔を見せる。


「僕が君からのお誘いを断るはずがないでしょう?」






     僕も楽しみにしていますよ。






ふわりと微笑み、弁慶は望美の頬に口付けを落とした。

















共に過ごす初めてのクリスマス。

嬉しくて、楽しみで、望美の心は躍るようだった。


















Love sick


















街を彩る美しいイルミネーションの中を、
二人は腕を組みながら楽しそうに歩いていく。

夜景の見えるレストランで食事をし、外を出ると雪がちらほらと舞っていた。

弁慶からのプレゼントは、永遠を誓うようなペアリング。

望美は嬉しくて涙を滲ませる。










そんなクリスマスを送る予定だった。

そのはずだったのに。










12月25日、クリスマス当日。

望美はベッドで寝込んでいた。

頬は赤くなっていて、額には冷却シート。

熱は38度    と、望美は完全に風邪を引いてしまった。






「はぁ…」


望美の口からは、もはや溜め息しか零れなかった。


色々立てていた計画も全て台無しである。


悲しいやら、悔しいやら、腹が立つやらで望美の目には涙が滲む。


レストランやら指輪やらは妄想としても、弁慶と共に過ごすのを楽しみにしていたのだ。






逢いたい。






身体が重くて、寂しくて、望美はゆっくりと瞳を閉じた。















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ひやり…と額に何か冷たいものを感じ、望美はゆっくりと目を開ける。






すると。






弁慶の柔らかい笑顔が望美を見つめ続けていた。


「弁慶、さん…?」


「まだ熱が高いようですね。辛いでしょう?」


そっと、暖かい手が望美の髪を撫ぜ、優しい口付けが額に降ってきた。


「どうして…」


「君が心配で、仕事を早く切り上げてきてしまいました」


悪戯気に弁慶は微笑む。


薬剤師として働く弁慶は、本当に忙しくなっていた。


その中で心配させてしまったことが申し訳なくて…だが逢いにきてくれたことが嬉しくて、
望美は弁慶の手をそっと握り締める。


「ごめんなさい…」


ありがとう…と、望美はにっこりと微笑む。


「礼など必要ありませんよ」






    君の傍にいることは、僕の役目ですから。






その言葉がくすぐったくて…嬉しくて、望美は耳まで真っ赤に染める。


「本当に…君は可愛い人ですね」


弁慶がクスクスと笑みを零すと、望美は突然「あ!」と大きな声を上げて起き上がった


ずっと寝ていたところで突然起き上がったため、くらくらと眩暈がする。


「望美さん、ダメですよ。しっかり寝ていなくては…」


弁慶は望美の背に手を添えながらその身体を横たえると、心配そうな眼差しを向ける。


「弁慶さんに…渡したいものがあったんです…」


今日はクリスマスだから…と、寂しそうに俯く。






本当だったら、デート中に渡していたはずのもの。

やはり、当日に渡さなくては意味がない。






「僕に…ですか?」


「ホントに…大したものじゃないんですけど」


    ベッドの下に置いてあるんです。


その言葉の通りに見てみると、プレゼント用らしき可愛らしい紙袋がベッドに立てかけてあった。


中には小さな箱。


「開けて…みてください。あまり良いものじゃないかもしれないんですけど…」


リボンを解き、箱を開ける。






その中に入っていたのは、シンプルなシルバーのカフス。






弁慶は驚いた様子で望美を見つめる。


「これは…」


「これなら、仕事中もつけてもらえるかなって思って…」


少しはにかんだように、望美は微笑む。






忙しい仕事中でも邪魔にならないようなプレゼント。

何にしたら良いのかたくさん考えて、望美はカフスを選んだ。

弁慶は望美の恋人であるという証として。






「どうですか?」と、望美がそう尋ねると、まるで答えの代わりのように弁慶の温もりに包まれた。


覆い被さるように、弁慶の腕は望美を包み込む。


「べ…弁慶さん?」


「…ありがとう、望美さん。本当に嬉しいです」


「えっと…あんまりくっついてると、弁慶さんも風邪引いちゃいますよ」


照れ隠しのように弁慶の胸を押して身体を離そうとするが、
弁慶にしっかりと抱き締められていて、なかなか身動きが取れない。


「身体…熱いですね」


「移っちゃいますってば…っ」


どうにか顔を上げて弁慶の顔を見る。






弁慶は何よりも幸福そうな笑顔をしていて。






望美はさらに恥ずかしくなる。


「移してください。それで君が元気になるのなら…」






頬を染めているというのが僕ではない…というのが、少々気に入らないのですが。






にっこりと微笑んだ弁慶は、その頬に唇を寄せた。






そして。






言の葉を紡ごうとしたその唇を、甘い口付けで塞いだ。

その熱を吸い取るように、甘く、深く。

望美の頬が赤いのは、熱のせいか。

それとも。














この世界で初めて過ごすクリスマス。

甘くて熱い聖夜となる           

















あれ!?弁慶さん難しい…!(死)
しかも、タイトルと合ってないかも…?(オイ)
クリスマスということで、たまには風邪引いちゃうのもありかなぁと(笑)

てか、あれは悪化しそうですね(笑)
うん。


それでですね、弁慶さんからのプレゼントは…

















弁慶が帰り、望美は再び一人きり。

だが弁慶の看病のおかげで少しは気分が良くなり、望美はゆっくりと起き上がった。

まだ頭はボーっとするものの、先ほどの眩暈はない。

不意に、望美は枕元に置かれた箱の存在に気付いた。






ラッピングされた、小さな箱。

望美が弁慶に贈った箱よりも小さくて。






箱の下には、カードのようなものが置いてある。

















    メリークリスマス

           愛を込めて






             君だけのサンタクロースより

















小さな箱に入っていたのは、きらきらと光る金剛石の指輪。

優しいサンタから、聖夜の贈り物。















ちなみに金剛石とはダイヤモンドです。いちいち言わなくても知ってるって?すみません(土下座)
うん。ダイヤって言うよりも漢字で言いたかったんですね(笑)


















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